(取材協力:ライター&フォトグラファー 岩見尚子さん)
障害の有無に関わらず誰もが「好き」「得意」を仕事にできる未来に向かいたい!
そんなおもいを共にする仲間と繋がるため「ル・クロ×チャレンジドLIFE共同プロジェクトを立ち上げました!
プロジェクト第1弾として、2023年6月22日、ユニバーサルレストラン「ル・クロ」を会場に、ニューロダイバーシティの第一人者「ニューロダイバーシティの教科書」著者の村中直人さんをお迎えして、セミナーを開催しました。
企業、福祉関係、医療関係者などを中心に、会場には約40名もの方にお申込みいただき、「ニューロダイバーシティ」「発達障害」「働きやすい職場」などへの関心の高さを感じながら当日を迎えました。
当日の会場の熱量も高く、参加者から多くのご質問もいただき、大盛況で終えることができました。
「ニューロダイバーシティ」の言葉の定義と、ル・クロですでに行われている働き方・働く場所について、ハード面・ソフト面から考えた3時間の様子をお届けします。
準備~お出迎え
会場のユニバーサルレストラン「ル・クロ」は、障害のある方(キャスト)が調理や接客など様々な役割を持ち、プロのシェフと共に働いている「ユニバーサルレストラン」です。また、同じ建物内に「バリュー・ラボ・フクロウ(就労移行支援・就労継続支援A型事業所)」・「ル・クッカー(児童発達支援・放課後等デイサービス)」も併設されています。今回のイベントでもキャストさんが会場の準備をしてくださいました。
登壇者がそろって最後の打ち合わせを行い、会場設営の準備も着々と進みます。
いよいよお客様を迎えます。各テーブルではすぐに名刺交換などの交流をされていました。
いよいよスタート!
満席となった多数のご参加のもと、いよいよスタート。まずはチャレンジドLIFE代表の畠中からの挨拶。昨年の12月のイベント「職場で「ニューロダイバーシティ」を実現するには?をきっかけ、ル・クロ×チャレンジドLIFEの共同プロジェクトが始動したこと、関わってくださった皆様への感謝の気持ちをお伝えしました。
続いて「ユニバーサルレストラン ル・クロ」 オーナーシェフの黒岩功さんからご挨拶。
「障がいあるなしに関わらず多様性を受け入れ共に生きることが、企業価値を上げ人材育成につながり、人材が限りない豊かな会社を実現することを理論と実現を交えて具体的に伝えることが、ル・クロ×チャレンジドLIFEの共同プロジェクト第一弾で取り組みたいことです。」とお話しくださいました。
黒岩 功さんの講演「ルクロ流の場づくりが世の中を変える〜それぞれの職場で実践するために〜」
(講演概要)
フランス料理の世界は、アンチ・ユニバーサルな業界。職人の集団で育てられてきたので、多様性を認めるということに、自分自身も慣れていなかった。
障がいがある方が働く環境へ初めて足を踏み入れた時、彼らが働くということの喜びをすごく感じながら仕事をしている姿が本当に素敵だなぁと感じた。働いている時間、空間が、自分の在り方を表現してそこにいるということが喜びである。その世界観を目の当たりにした時、「この世界観すごいな!!」と感じ、そこから福祉の世界へ興味を持ち、こういう世界観を作りたいと思いB型事業所を立ち上げた。
福祉と出会い、障がいがある多様なメンバー(キャスト)達と共に働く。キャストたちのために何ができるのかな?自分の我が子だったら。親・兄弟だったら?と考え行動し続けてきたら、今のル・クロ流が出来上がっていった。レストランの雰囲気も、自分自身も、変化を感じている。
村中直人さんの講演「ニューロダイバーシティとは?~多様性を尊重する働き方のヒント~」
(講演概要)
ニューロダイバーシティとは?
人間の持っている脳の神経の働き方の1人1人の違いをいかに尊重できるか?そういう社会を目指していくか?という考え方です。朝早く起きて活動するのが得意な人も入れば、夜の方が活動しやすいという人もいる。
企業にとって、なぜニューロダイバーシティが必要なのか?
ものの見方、考え方、価値観が違う認知的多様性人材による「集合知(多様な知識の集まり)」からしか、ここから先イノベーションは生まれない。ブレイクスルーは起こらない。
メモを取りながら聞いた方が理解や記憶がしやすい人も入れば、メモを取らないで聞いた方が理解や記憶がしやすい人もいる。
朝早く起きて活動するのが得意な人も入れば、夜の方が活動しやすいという人もいる。
これら全て脳の神経の働き方や個性であり、ニューロダイバーシティーは人類みんなが当事者になる。ニューロダイバーシティーは、発達障害という言葉の置き換えではない。
今からできることと
今、共に働いている仲間同士の中に存在している「違い」に向き合っていく。すでに、多様な仲間と働いているので、違いをどう理解し、尊重していくのか。多様性が「ある」「ない」、「認める」「認めない」の議論ではなく、多様でないものを多様にするという運動でもない。事実として存在する「脳や神経由来の人の多様性」とどのように向き合うのかが問われている。
トークセッション「ルクロ流の場づくりが世の中を変える〜それぞれの職場で実践するために〜」
黒岩功さん、村中先生、畠中によるトークセッションでは、参加者の方からも多くの質問をいただき答えていくというスタイルでした。
村中先生は、実際にバリューラボフクロウ(B型就労支援)で1日働く体験をされたエピソードをお話いただきました。
「怒号が飛び交っていた厨房から、どんな工夫をし、どのような思いで舵を切り、今のスタイルになっていったのでしょうか?」という質問に対し、黒岩さんは「福祉を始めてからは、なんで彼らは、ここでつまずくんだろう?彼らが今日成功体験できなかったのはなぜだろう?どうすればできるようになるだろう?と、一つひとつ段取りを考えるようになった。それが現在のル・クロのオペレーションにつながっている」とのことでした。
会場からの多くの質問にもお二人とも真摯にお答えくださり、参加者のみなさんも大きくうなづかれるばかりでした。
最後に、これまでのお話の中で気づかれたこと。自分の職場や環境で、どんなことを初めの一歩としてできることがあるか?やりたいことがあるか?をワークシートに書き出していただく時間を設けました。
「いい話をきいたなぁ」で終わらず、ご自身の職場での実践につなげていただきたいと願っています。
ル・クロ×チャレンジドLIFEの共同プロジェクトは、今後も続きます。
次回は2023年9月6日(水)、会場は今回と同じくユニバーサルレストラン「ル・クロ」です。
リアルで会い、直接感じるからこそ伝わることもあるなぁと、みなさんとご一緒できてすごく感じています。
またリアルにこだわって、こうしてみなさんとぜひまたお会いできればと思います。